豆腐作りは、周りの支えがあってこそ。感謝の想いを胸に“理想の豆腐”を追求する。 むさし屋豆腐店 豆腐作りは、周りの支えがあってこそ。感謝の想いを胸に“理想の豆腐”を追求する。 むさし屋豆腐店

日本一おいしい豆腐を決める「全国豆腐品評会」で、
2023年の最優秀賞・農林水産大臣賞に輝いたのが、
東京都練馬区の「むさし屋豆腐店」の看板商品、
『寄せ豆腐』。
“濃厚でクリーミー”“大豆の甘みが口いっぱいに広がる”
といった感動の声も続々と寄せられる
『寄せ豆腐』の生みの親、
むさし屋豆腐店・3代目の
名古屋 直登さんにお話をうかがいました。

日本一としての喜びとプレッシャー

2022年、お子さんの誕生の記念にと初めてエントリーした全国豆腐品評会で『にがり木綿』が木綿豆腐の部の1位となる金賞を受賞。そして2度目のエントリーとなった2023年には『寄せ豆腐』が日本一となる最優秀賞・農林水産大臣賞を受賞!快挙を成し遂げた感想を名古屋さんに聞くと「とてもありがたい気持ちと同時に、大きなプレッシャーも感じています。より質のよい豆腐を作っていかないと、農林水産大臣賞や豆腐品評会の質を落としかねないですから。」と、豆腐に真剣に向き合っているからこそ、喜び以上に受賞の重みと責任を感じている答えが返ってきました。

むさし屋豆腐店 3代目の決意あたらしく、自分らしく

名古屋さんがむさし屋豆腐店の3代目としてお店を継いだのは、なんと大学3年生の時。「2代目である父の病気がわかり、店を継ぐことになりました。朝5時から豆腐を作り、取引先に配達をしてから大学に行くという生活がスタート。父の代は、すまし粉を使用した、さっぱりとした味わいの豆腐を中心に作っていました。主な取引先は学校で、店頭での販売はあまり行っていませんでした。店を継ぐからには、自分ならではの豆腐を作って勝負したいなと。店頭での販売に力を入れて、お客様からの声も聞いていきたい。大豆のおいしさや香りを味わえる豆腐を目指して、全国の大豆について調べたり、大豆の問屋さんで情報を集めたり、他の豆腐屋さんで製造の様子を見せてもらったりしながら試行錯誤を重ねてきました。」

豆腐を作り続けられるのは周りの方々の支えがあってこそ

「自分が思うような豆腐がなかなか作れず、悔しい思いもたくさんしましたね。25、6歳くらいの時には、豆腐作りに必要な機械が壊れてしまって…買い直すとなると数千万円という莫大な資金が必要になるので、店を閉じたんです。企業に就職もしたのですが、縁あって、状態の良い中古の機械を購入できることに。おかげさまで店も再開できました。自分の豆腐作りは、大豆の生産者さん、にがりの生産者さん、機械屋さん、豆腐を置いてくれている飲食店さん、そして家族、たくさんの方々や縁に支えられて続けられているんだなと感じています。」一気に注目を集めた名古屋さんの豆腐ですが、道のりは決して平たんではなかったのです。だからこそ周りに対して常に感謝の気持ちを忘れない名古屋さん。その真摯な姿に胸を打たれます。

「高くてもおいしければ売れる」その言葉を胸に、固めた覚悟

むさし屋豆腐店の豆腐は、国産大豆、しかも在来大豆を厳選して使用しています。在来大豆は、品種改良された大豆と比べて育てにくいこともあり、収穫量も生産する農家の方もあまり多くはありません。「在来大豆にこだわると、豆腐の価格がどうしてもあがってしまいます。価格があがると、お客さんが離れてしまうのでは…と迷っていた時期もあったのですが、“高くたっておいしければ売れるよ”と背中をおしてくださった方がいて。その一言が、むさし屋豆腐店の分岐点だったかもしれませんね。在来大豆でおいしい豆腐を作っていこうと、腹をくくることができました。」

豆腐に興味がない人もおいしさで振り向かせたい

現在は、在来大豆の中でも希少な、茨城県産の「あくと豆」という大豆をメインに使用。名古屋さんの受賞を、あくと豆の生産者さんも喜んでくれたそうです。「自分を支えてくれたみなさんが今回の受賞を喜んでくれたことが、さらに自分の励みになっています。」日本一に輝いた今も、挑戦は続きます。「自分にとって理想の豆腐は、大豆の甘みや香りを楽しめる豆腐です。見た目のキレイさにもこだわりたい。理想の豆腐を作るために、大豆の個性を一番引き出すにはどうすればいいのか、毎日毎日、いろいろ試しながら模索しています。まだ“これが一番いい”という答えは見つかっていませんが、作るからにはもっとおいしい豆腐を目指したい。豆腐に興味がない人も振り向かせたいですし、豆腐を好きになってほしい。まだそこに至っていないので、これからも追及し続けます。」

大豆は生きもの。毎日向き合い、おいしさをずっと

豆腐作りはうまくいくことばかりではないそうですが、豆腐について話す名古屋さんはとても楽しそうです。「大豆は生きものだなと日々感じています。ちょっとした大豆の状態の違い、それから気候なんかも豆腐の出来を左右します。今日、理想的な豆腐が作れたとしても、明日同じ豆腐が作れるとは限りません。ブレがあるのが手作りの良さでもありますが、そこに甘えてばかりもいたくない。店の常連さんの中には、その日その日の豆腐の味わいの違いに気付く方もいらっしゃいます。感想を教えていただけるのはとてもありがたいですね。うちの豆腐に期待してくださっているお客様の期待にこたえられるよう、研鑽を重ねたいです。自分の理想とする豆腐を作り、豆腐をはじめとする大豆製品の魅力を発信していける職人になりたい。もちろん、全国豆腐品評会の2連覇も目指します!」

むさし屋豆腐店は、2024年10月20日まで大規模な改装工事中となり、その間、店舗での販売はお休みとなります。
店舗がお休みの中は、東伏見にある焼き鳥「鳥金」さんで曜日限定で商品点数を絞って販売予定!
最新情報は、むさし屋豆腐店のInstagramからチェック。また、公式オンラインショップでのお取り寄せも可能です。
最後に名古屋さんに新しい店舗でチャレンジしたいことを教えてもらいました。「遠方からのお客様も増えてきているので、
飲食ができるちょっとしたスペースを作る予定です。そこで出来立ての油揚げやドーナツを食べていただきたいですね!
豆腐作りの体験の場も準備できたらと思っています。わざわざ足を運んでくださる皆さんに楽しんでいただけるお店にしていきたいです。」
取材中もたくさんのお客さんが購入していた、名古屋さんのお母さんが揚げる『おからドーナツ』も、
揚げたてをお店で食べられるようにしたいと語ってくれました。10月のリニューアルオープンがとても楽しみです。

PROFILE

むさし屋豆腐店 名古屋 直登 さん

約50年も続く「むさし屋豆腐店」の3代目店主。豆腐作りのほか、商品の考案、
WEBやSNSでの情報発信も担当。

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