「なんでも簡単にできてしまう時代だからこそ、
時間と手間をかけて、身近なものを宝物に変えていく…
そんなコンセプトでジュエリーを作っています。」
そう語ってくれたのは、
ジュエリー・デザイナーの桜井みどりさん。
桜井さんが手掛けるジュエリー「BOSCO(ボスコ)」
についてお話を伺いました。

菩提樹や桜などの木と純金箔で作られるオーガニックなジュエリー「BOSCO」。イタリア語で「森」を意味するBOSCOのジュエリーは、金属製のジュエリーとは異なり、温もりを感じるやわらかな風合いが特徴です。
ジュエリー・デザイナーの桜井みどりさんが学んだ、ヨーロッパの伝統的な“古典額縁技法”を用いて、いくつもの工程を経て作り上げる手作りのジュエリー。世界中を探しても、ひとつとして同じものはありません。メンテナンスしながら30年以上も愛用しているお客様もいるそうです。

ジュエリーの土台は熟練の技で美しく彫り上げた木。それに膠(にかわ)や石膏、珪藻土(けいそうど)を重ねた後、純金箔や純銀箔、純プラチナの箔を貼り、瑪瑙(メノウ)で強く丁寧に磨き上げて仕上げます。
金箔と聞くと丁重に扱わないと…と思いがちですが「最後にニスを塗っているので、水に触れても大丈夫。BOSCOはメンテナンスができるジュエリーですが、そもそもの作りが丈夫。金属が直接肌に触れないので、金属アレルギーの方でもお使いいただけますよ。」身に着けてみると、その軽さにも驚かされます。気負わずに日常使いしやすい、それもBOSCOの特徴です。

国内のみならず、海外からも注目を集める桜井さんとBOSCO。これまで、額縁のメッカであるフィレンツェで2回、台湾、上海、北京で1回ずつ、ニューヨークでは3回も個展を開催してきました。
「ヨーロッパの技法を用いているので、私としては西洋的なイメージをもって作っているのですが、純金箔ならではの色合いの影響か、海外のお客様からは“オリエンタル!このようなジュエリーは見たことがない”と感動されることが多いんです。」

「大事なビジネスシーンでBOSCOのジュエリーを選んで身に着けてくださるお客様もいらっしゃって。 “それは何?面白いジュエリーをつけているね” “これ、実は木でできているのよ”なんて、会話のきっかけになるそうなんです。日常の自分を素敵に見せて、周りの人も少し幸せに。そんなふうに、身に着ける方にとって宝物になるジュエリーをこれからもずっと生み出していきたいですね。」

ジュエリーメーカーでハイジュエリーのデザインを数多く手掛け、数々の賞を受賞していた桜井さん。やりがいを感じつつも、高級な素材にこだわるジュエリーだけでなく、よりデザインの価値を重視したジュエリーを作りたいと27歳で独立しました。在職中にヨーロッパで出合った古典額縁技法による額縁に魅せられ、自分でも作ってみたいと日本で額縁を制作する先生に出会い師事。ジュエリー・デザイナーとして活躍する傍ら、趣味として額縁を作りはじめました。

「あるとき、古典額縁技法でジュエリーを作ってみたいと先生に相談したところ、“額縁の作り方は教えられるけれど、ジュエリー作りは教えられないよ”と言われて。ならば自分がはじめてみよう!と思ったんです。」
決意を胸に、額縁のメッカであるイタリアのフィレンツェをはじめ、ヨーロッパに年に何度も足を運んだという桜井さん。額縁の情報を集めながら、自分以外に古典額縁技法でジュエリーを作っている人がいないか各地で探しましたが結局見つからず、自身が唯一の存在だとわかったのだそう。

作り手が世界に一人となると、実は困ることも…。「ジュエリーは額縁よりもずっと小さいので、額縁用の道具はジュエリーを作るには大きすぎて。なので、求めるサイズの道具が存在しないときは自分で作りました。今でも道具は手作りしているものが多いです。金箔を貼るための刷毛も手作り。毛は、うちの犬の毛を使って作っているんですよ(笑)」
先人がいなければ道は自分で切り開く、道具がなければ自分で作る。そんな桜井さんの熱意と行動力も、ファンを引き付けて離さない理由の一つなのかもしれません。

桜井さんの手にかかれば、梅の種やユーカリの実、さるのこしかけやハチの巣もジュエリーに。「日常にあるものが、宝物にかわる。そんな見方で世界を見ていたら、本当に楽しいですよ。散歩の途中に見つけた木の枝が宝物に見えて、ワクワクしてきます。自然からの恵みなので、季節によって、日によって、出会える宝物が違う。まさに一期一会なんですね。工房でワークショップもやっていますが、生徒さんが木の枝や実を見つけてきて“先生!これでジュエリー作りたい”と、笑顔を輝かせるんです。そんな笑顔に、こちらまで嬉しくなります。」

「ダイヤモンドも木も、人間がゼロから作り出すことはできない。木を育てることはできても、木そのものを作り出すことはできない。そういう意味では、ダイヤも木も価値は同じだと考えています」そう語る桜井さん。
「生命を生み出す種や木の実って、ダイヤと同じくらい価値がある、どちらも大切。そう思いながら私は木を彫っています。金も銀も優れた素材。木と金箔をつなぐ膠もすごい。人間が作り出すことができない、自然の素材のすごさを感じながら、これからもずっとジュエリー作りと向き合っていきたいです。」

海外に向けてBOSCOの魅力を伝えていく際、心強い味方となってくるのが長女・らむさんの存在。
ジュエリー作りの工程を紹介する動画を準備したり、SNSを駆使したりしながら日本へ世界へと情報を発信しています。
コロナの影響でストップしていた個展も、らむさんと二人三脚で再開に向けて動き出しているそうです。
BOSCOの今後の展開に目が離せません!
ハップアールも手間を惜しまずにモノづくりをしていると自負するスキンケアブランド。
桜井さんへのインタビューを通じて学んだことを糧に、
さらにみなさんの肌に丁寧に寄り添えるブランドに成長したいと願っています。


女子美術短期大学(造形科)卒業後、1983年よりジュエリー・デザイナーとして活躍。ヨーロッパの古典額縁製作技法によるジュエリー「BOSCO」を1993年よりスタート。プレシャスストーンのオーダーデザイナーとしても活躍。
https://www.bosco.tokyo/
https://www.bosco.tokyo/featured-project