自分の“楽しい”が、見る人を楽しませる。見た人の“楽しい”が、作品作りの糧になる。版画家 竹上妙さん 自分の“楽しい”が、見る人を楽しませる。見た人の“楽しい”が、作品作りの糧になる。版画家 竹上妙さん

ハップアールのスタッフが働くオフィスに今年、
ロズリン社長が一目ぼれした版画が飾られました。
見るたび元気がチャージされるような作品で、
飾られた途端、社内の注目の的に!
そこで今回、この版画を手掛けた竹上妙さんに
お話をうかがいました。

多摩川の土手を満喫した子ども時代

竹上さんの作品や絵本をみると、ひと目で、生きものや植物と切っても切れない関係であることが伝わってきます。
「植物好きの母、海や川の生きものが大好きな父に連れられて、多摩川の土手や逗子の海によく足を運びました。土手や海岸で、植物や生きものと楽しそうに触れ合う両親の姿をみて育ってきたので、私も大好きに。あの草むらには虫がいそう、この石をひっくり返したら貝がいそう…と、何かがいそうな場所をみると、子どもの頃も今も、心がときめきます!」

友だちが描くキラキラ女子に憧れて

植物や生きものと触れ合う機会が多かった子ども時代…ならば小さな頃から生きものの絵を描いていたのかと想像しますが、絵を描き始めたきっかけを聞くと「小学校低学年の頃、クラスにとても絵が上手な子がいて。目がキラキラした女の子の絵を上手に描くのに憧れて、その子の絵をまねして描いていました。彼女が左利きだったので、同じように左手で描こうとしたことも(笑)」と意外な答え。
竹上さんが“自分ならではの絵”を描くようになったきっかけは、グランドキャニオンでの出合いにありました。

心ときめいた、アメリカの色づかい

「小学5年生のとき、家族でアメリカを車で旅する機会があって。その時に立ち寄ったグランドキャニオンで、見たことのない色使いのお守りや、当時の日本ではまずお目にかかれないような色のエナジードリンク、カラフルな現地のアクセサリーや植物を目にして…それらの色づかいに、ときめいたんです。グランドキャニオンで見て“わ!いいな”と感じたものを絵に描いてみたら、周りが“いいね”と言ってくれて、それがとっても嬉しくて。誰かの絵をまねて描くのではなく、自分で考えて描くことの楽しさを味わえたんです。」

作品を見た人の反応が、作品作りの糧になる 作品を見た人の反応が、作品作りの糧になる

竹上さんが画家になろうと決意したのは高校2年生のとき。「学校行事でたくさんの卒業生と会ったのですが、ミュージシャンやプロレスラー、カメラマンなど、好きなことを仕事にしている先輩とたくさん出会って。 “じゃあ私は、好きな絵を仕事にしよう”と自然の流れで決意、和光大学芸術学科へ進学しました。大学3年で版画ゼミに入り、初めての展示会も経験しました。作品作りはもちろん、作品を額に入れる、搬入して壁に飾る、さいごには搬出…人とかかわりながら自分の作品が誰かの目に触れる、展示会にまつわる全ての作業が楽しかったですね!展示会に来てくれた人たちの反応もよくて。自分の“楽しい”が見に来る人を楽しませていることによろこびを感じ、自信にもつながりました。」

ワクワクと手ごたえを原動力に

「版画にする絵を描いて、よし、これを版画にするぞという瞬間、それから版木を用意して彫って、そして刷って紙をめくる瞬間が一番ワクワクします。刷り終わったあと、積みあがった版木をながめると充実感がありますね。」
版画にまつわる全てを楽しむ竹上さん、大学4年のときには大学版画展で見事、観客賞を受賞します。「見に来てくれた人が評価してくれて、やったー!って(笑)そして、もっと見てもらいたい!というエネルギーがそのとき生まれました。」その後、はじめての個展も経験。会場探し、ギャラリーとの交渉など、全てゼロからの準備ですが、大変だという気持ちは全くなかったそうです。「小さなギャラリーでの開催でしたが、想像以上にたくさんの人が見に来てくれて作品も買ってくれて。展示の経験を積むたびに、楽しさや手ごたえを感じるので、定期的にグループ展や個展を開催しています。」

2017年、絵本作家デビュー

竹上さんの活躍の場は、絵本にも広がっています。『きょうは泣き虫』(好学社)、『うみのあじ』(あかね書房)など、子どもはもちろん、大人も魅了する絵本が続々と出版されています。「話を面白いねと言ってもらえるのも嬉しいですが、繰り返し何度もページをながめたくなる、そんな絵本を出していけたらなと思っています。版画家として作品を発表しているからこそ、絵本のほうでは少し肩の力を抜いて、版画にこりかたまらず色々な表現方法を試してみたいと思っています。そういえば、私の絵本の中で好きな場面を紙に描きだして、それをジグソーパズルにしてプレゼントしてもらったことがあるんですよ。これが難しくて!まだ完成できていません(笑)」

奇跡のような一瞬を作品にする「みたらみられた」 奇跡のような一瞬を作品にする「みたらみられた」

竹上さんが“永遠のテーマ”と掲げているのが「みたらみられた」。生きものと目が合ってハッとした瞬間を作品にしています。「高校の夏、長野で放牧中の牛に囲まれて…牛と目が合ってハッ!とした体験がきっかけです。たまたまその瞬間、同じ空間に居合わせて、そして目が合う、お互いが意識しあえる一瞬がある、そんな奇跡のような瞬間をテーマに作品を作り続けています。このテーマで個展も開催してきました。」2021年にはついに絵本『みたらみられた』(アリス館)も完成!ページをめくるたび、登場する生きものと目があった感覚になり、最後までドキドキとワクワクがとまりません。放牧中の牛との、みたらみられた瞬間もおさめられています。「自分が大事にしているテーマの絵本をつくることができて嬉しかったです。みたらみられた、という経験をもっと重ねて、自分の作品をもっともっと作っていきたいです。」

作品からもお話からも、人との縁、生きものとの一瞬の出会い、
偶然のめぐりあわせを大事にしていることが伝わってくる竹上さん。
見た人の心をやさしくほぐしてパワーを与えてくれる竹上さんの作品やお人柄のように、
ハップアールも皆さまの素肌に寄り添えたら…そんな気持ちになるインタビューでした。

2022年夏も竹上さんの個展が開催されます。場所は「町田市民文学館 ことばらんど」。
絵本の原画や、新たな作品が展示され、小学生を対象としたワークショップも開催予定!
最新の情報は、ぜひ竹上さんのInstagram「町田市民文学館 ことばらんど」のサイトでチェックしてくださいね!

PROFILE

竹上 妙さん 版画家 竹上 妙さん 版画家

個展、グループ展を中心に活動。長野で牛にかこまれたときの衝撃から、
生きものと目があった瞬間の「見たら見られた」をテーマに木版画を制作している。
2017年『マンボウひまな日』(絵本館)で絵本作家デビュー。

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